大島弓子「グーグーだって猫である」猫=生命を描き、人の心を描く。

猫漫画の本と紫陽花 大島弓子の猫漫画

グーグーだって猫である」は、大島弓子先生の飼い猫となる“グーグー”との出会いに始まり、のちに一緒に暮らすことになる猫たちとのコミュニケーション、愛猫たちと生きる大島先生自身を描く漫画です。

グーグーだって猫である」は、角川書店(現在はKADOKAWA)の漫画雑誌「ヤングロゼ」に1996年6月号から1997年8月号まで掲載され、その後、角川書店の文芸雑誌「本の旅人」に引き継がれ掲載されました。

1話4ページで描かれるショート・ショート猫漫画です。

「グーグーだって猫である」

角川書店 単行本 全6巻 *角川文庫 全6巻

13年5ヵ月と1日という長い年月をともにした愛猫“サバ”を失い、後悔やら罪の意識やらを交えた“サバ”への思いが募る中、ひときわ小さな子猫と出会った大島先生。

この、小さな子猫が“グーグー”。

グーグーはアメリカンショートヘア

グーグー”はペットショップのケージの隅で頼りなく背を向けていた子猫だったと描かれています。小さな命との出会い。

あまりにも小さくて元気のない子猫を抱いたところ、とても心配になった大島先生は子猫を飼うことに決め、連れて帰りました。

飼い始めたものの“グーグー”は、めやに・鼻水・クシャミが止まらず、お腹には条虫(寄生虫:栄養を奪う)がいるわ、関節発育不足だわ、ノミはいるわ、下痢はするわ…早めに大島先生に出会えてホントにラッキー、という状況だったそうです。

大島先生が子猫を救ったことに応えるように、小さな子猫“グーグー”が、大島弓子という一人の人間を生かしていくんだなぁ…と思わずにいられないエピソードの数々。

淡々と軽妙なタッチで描かれる“グーグー”との日々。

そして“グーグー”と暮らしながら、次々と新しい猫と出会い、暮らし、別れ…。

生命の儚さや生きることの目まぐるしさが、気負うことなく明るく4ページの漫画に描かれていきます。

愛猫家 大島弓子の祈り

漫画家 大島弓子のすごいところは、言葉の率直さにあると思ってきましたが「グーグーだって猫である」でも、そのパワーは全開です!

 

  二度目の猫はトクである

  死んだ猫の分まで大切にされる

 

…もうね、この文を読んだ途端、心をガードしていた何かがはじけとんじゃって、ぽろぽろ泣きました。

大島先生は、最初の飼い猫“サバ”との暮らしでは気づけなかった、無知がもたらす残酷さも正直に描きながら、祈るように言葉を綴っています。

 

  グーグーが長生きしますように

  病気しませんように

  事故にあいませんように

  この家の生活がたのしめますように

  そして天寿を全うしたら このわたしが
  グーグーを送ることができますように

 

誰に向かって祈るわけでもない、心からの祈りは、こうやって言葉になり、文字になり、漫画になって、誰かの心をふるわせている…と思います。

漫画家 大島弓子は何を描いても大島弓子だと、納得させられてしまうパワーは健在です。

猫と生きる人に読んでほしい漫画

ごくありふれた日常のような猫との暮らしに、隣合わせのようにある生命の終わり。人より短い生を生きる猫を生き物を思うとき「グーグーだって猫である」を思い出し、読みます。

グーグーだって猫である」は、これから猫と暮らし始める人にも読んでほしい、猫漫画というより猫と向き合う人の漫画です。

基本、楽しくて微笑ましい漫画ですから、気軽に楽しめます。誰にもありそうな何気ないエピソードだからいいんですよね、きっと。

映画化・ドラマ化もされました。

 

「グーグーだって猫である」は、漫画を原作にした映画とテレビドラマが制作されています。

 

映画版は主演:小泉今日子、監督:犬童一心、2008年公開。

 

ドラマ版「グーグーだって猫である1」は全4話、2014年。ドラマ版「グーグーだって猫である2」は全5話、2016年。主演:宮沢りえ、監督は映画と同じく犬童一心。WOWOWにて放送されました。

タイトルとURLをコピーしました