生藤由美「ボードレールの猫」猫と青年と、不思議な恋の物語。

「ボードレールの猫」とカーネーション 生藤由美の猫漫画

書店員だった前世の記憶を持つ一匹の野良猫。ある日ふらりと小さな本屋に入ったら…!頭部は猫、体は人間の女の子という姿に変わっていて…?!

街の小さな本屋を舞台に不思議な恋が始まりそう…。

「ボードレールの猫」

集英社 愛蔵版コミックス「ボードレールの猫①」続刊中

ボードレールの猫」は、漫画雑誌「Cookie」2020年1月号より連載を開始しました。“人間だった頃の記憶を持つ猫の不思議な体験”を描く、生藤由美先生の新シリーズです。

ボードレールとは、猫の詩人といわれるシャルル・ボードレール(フランス 1867年没)のこと。

生藤先生が、ボードレールにインスピレーションを受けての作品のようです。

ボードレールは、19世紀のフランスを代表する詩人。ボードレ-ルが発表した『悪の華』(あくのはな、フランス語: Les Fleurs du mal)は、詩人の生誕から死までを退廃的、官能的に表現した韻文詩集。ボードレールはこの『悪の華』だけでフランス近代詩の創始者となった。ボードレールは猫好きだったことでも知られ『悪の華』には猫と題する詩が3つも載せられていることから「猫の詩人」ともいわれます。

「その頃 私は人間で」…

前世では、日本のどこかで書店員「佐島さん」だった記憶を持つ一匹の

佐島さん猫は、とある小さな本屋の入口をくぐると、女の子の姿に変身して人と会話ができるようになる…というファンタジー。

変身して佐島さん猫となった女の子の体の上には、リアルな猫の頭。ちょっとシュールな姿なんですが…。その猫の表情が、緻密に繊細に描き込まれていて、とてもせつない。

うつむいたときの角度や、気持ちをあらわす目線が、ていねいに描かれ、見開いた目や伏せた目から「猫になった佐島さん」佐島さん猫の気持ちが伝わってきます。

こういう感情表現を一コマで伝えてくれるのが、漫画の良いところですよね!

…というか、生藤由美先生の漫画の巧みさ!

ボードレールが言ったこと

すれ違う、猫と人間の気持ち。

猫は「猫になった佐島さん」、人間は「小さな本屋のオーナー奥村さん」。二人の出会いに遡って、物語は綴られていきます。

すれ違うのは、猫と人間だからなのか?

女と男だからなのか?

「猫になった佐島さん」は、読者には“人のカタチになってる”ですが、奥村さんの目には“猫の被り物をしてる変わり者の”ですからね!

佐島さん猫に向かって奥村さんが言います。『ボードレールが言ってるんですよ「女と猫は呼ばないときにやってくる」とね』

言葉ですべてが伝わるわけじゃあないから、コミュニケーションって苦労するのよね。言葉にしたら誤解が生まれることだってありますし。

…時に言葉よりもお互いの表情や仕草から理解しようと努めるほうが良いコミュニケーションになることもある…!

猫と人間のコミュニケーションでは、擦り合わせることもないお互い一方的な思いやりがあるだけでしょう。でも、その一方的なコミュニケーションで満足してはいなくても、納得はしている…と思いませんか?

人間と人間のコミュニケーションとなると、擦り合わせようとしてるのになかなか合わない、となる。すれ違ったままじゃあダメなのかな?と考えさせられました。

すれ違ってこそコミュニケーションの必要が生まれるもの!「女と猫は呼ばないときにやってくる」からこそ、良いんじゃありませんか?

意外性こそが相手を知りたくなる始まりですものね!

恋の始まりを、すごーく遠巻きに見せてくれてるんでしょうか?

「猫になった佐島さん」と「小さな本屋のオーナー奥村さん」はどうなるの?

…先の展開が気になります。

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